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教授
涌井秀樹

研究分野

疾患生物学 

研究内容

1.温故知新創薬

広く使用されてきた既存薬には、予期しなかった新たな薬効を示す例があります。例えば、抗マラリア薬として開発されたヒドロキシクロロキンは、現在では自己免疫疾患の治療薬として使用されています。既存薬の未知の標的分子や薬効を見い出し、新たな視点からの治療薬としての臨床応用(温故知新創薬)を目指しています。

本研究では、既存の免疫抑制薬・免疫調節薬に焦点を当て、新たな標的蛋白質を同定しています。これらの薬剤は、一般に副作用が少なく安価です。温故知新創薬の試みは、患者さんの負担軽減にもなり、医療に貢献することができます。

2.疾患の臨床病理学的研究

臨床研究と動物モデルの研究により、内科疾患(特に腎疾患、膠原病)における病因、病態、診断、治療に関する新たな視点を提示しています。

詳しくは、涌井教授のページを参照下さい。

3.ヒト赤芽球の脱核に関する研究

ヒトを含む哺乳類の赤血球には、核や細胞内小器官がありません。他の脊椎動物(魚類や鳥類など)の赤血球には、核が存在します。哺乳類の赤血球にはなぜ核がないのか、どのように核を放出するのかなど、多くの謎が残っています。

本研究では、ヒト赤芽球の培養系を用いて、細胞分裂やエネルギー代謝の観点から、これらの謎の解明を行っています。

4.比較生態学の観点に基づく研究

ヒトの生命現象を理解する上で、他種生物との比較研究も重要であり、温度によって反応速度が変わる酵素を対象に研究を行っています。中でも、解糖系酵素の一つである乳酸脱水素酵素(LDH)に着目し、酵素活性と温度の関係から、生物の環境適応について調べています。

これまでに、外温性動物である数種の魚類LDH活性の温度依存性を解析し、棲息温度域内では触媒反応は温度によらず一定であることを報告しました。これらの魚類には、水温の変化に柔軟に対応できる仕組みがあると考えられます。また、内温性動物である数種の鳥類のLDHも解析しています。

5.ハタハタ卵(ブリコ)蛋白質の生化学的研究

秋田県の県魚であるハタハタの卵は、ブリコの名で親しまれています。ブリコは、紫褐色、赤色、緑色などの色調を呈しますが、これらの色調の正体や、その生物学的意義は不明です。

これまでの研究で、ブリコから3種類の色素結合蛋白質(緑色、黄色、赤色)を見い出し、アミノ酸配列の同定や、色素物質の解析を行っています。ハタハタ卵の色素結合蛋白質の特徴を明らかにすることで、地域の水産産業への貢献を目指しています。

研究手法

1.蛋白質の精製と構造機能解析

各種のカラムクロマトグラフィー、電気泳動、Western blot、アミノ酸配列の同定、cDNAクローニング(学科内共同研究)、遺伝子組み換え蛋白質の発現・精製(学科内共同研究)、蛋白質の結晶構造解析(学科内共同研究)、質量分析による蛋白質の同定(理化学研究所との共同研究)、pull-down assay、酵素活性測定など。

2.ウサギを用いたポリクローナル抗体の作製と応用

Western blot、免疫組織染色(秋田大医学部との共同研究)など。

3.ヒト疾患モデル動物での病態解析

質量分析によるプロテオミクス解析(理化学研究所との共同研究)、免疫組織染色(秋田大医学部との共同研究)など。

4.ヒト造血幹細胞を用いた細胞分化の解析

Flow cytometry(秋田大医学部との共同研究)、酵素活性測定など。

5.臨床症例での自己抗体の解析

Enzyme-linked immunosorbent assay(秋田大医学部、札幌医大との共同研究)など。

授業担当科目

(学部)
生体機能学、疾患生物学I、疾患生物学II、基礎生物学実験、生物学実験Ⅱ
(大学院)
疾患生物学特論、生命医理工特論、疾患分子生物学Ⅰ、疾患分子生物学Ⅱ、疾患解析学特論、医理工連携実践論 

共同研究等

秋田大学医学部(血液・腎臓・膠原病内科学講座)
秋田大学医学部(総合診療・検査診断学講座)
札幌医科大学(微生物学講座)
北里大学医学部(衛生学講座)
理化学研究所(生命分子解析ユニット)

秋田県水産振興センター(資源部)
男鹿水族館GAO(企画部)

特記事項

【学外】

・石橋由紀子記念基金(平成25年度)
 腎不全進行防止を目指したネフローゼ症候群の病因解明(涌井)

・先進医薬研究振興財団(平成25年度)
 ヒト赤芽球における細胞極性決定機構と脱核メカニズムの解明(分担:布村)

・科学研究費基盤C(平成27-29年度)
 各種免疫抑制剤・免疫調整剤の新規標的蛋白質の同定と免疫系における臨床的意義(代表:涌井)

・科学研究費基盤C(平成27-29年度)
 ヒト赤芽球の脱核におけるエネルギー代謝制御機構の解明(代表:布村)

・秋田県ジオパーク研究助成(平成29年度)

・ブリコ色素結合蛋白質によるハタハタの系統・生態・分布の解析(布村、涌井)

・科学研究費基盤C(令和1-3年度)
 膜性腎症の病因・病態に関与する新規自己抗原の同定と臨床応用に向けた発展的研究(分担:涌井)

 

【学内】

・大学戦略推進経費(平成24年度)
 細胞分化に呼応した蛋白質の構造機能連関(代表:布村)

・大学戦略推進経費(平成26年度)
 医療上必要性の高い未承認薬の標的分子の同定と作用機序の解明(代表:布村)

・大学戦略推進経費(平成26年度)
 秋田県内のカドミウム汚染地域における農家のための保健対策への全学的な取り組み(分担:涌井、布村)

・学長リーダーシップ経費(平成27年度)
 温故知新創薬ー抗がん剤・免疫調節剤の新規標的蛋白質の同定と臨床応用(代表:涌井)

・学長リーダーシップ経費(平成27年度)
 ブリコの新規凝集活性蛋白質の同定と応用基盤の確立(代表:布村)

・地域志向教育研究経費(平成29年度)

・ハタハタ卵(ブリコ)の色素結合蛋白質の性状解析を基盤にした地域志向型生物学教育の確立(布村、涌井)